春の訪れはやわらかな夜にそっと溶け込んで

ついに誰もその全容を掴むことはできなかった

 

町はもはや語り部を必要とせず

ここで待つのも所詮は甲斐ないこと

 

若者は物語を求めて旅に出た

そして自らにもまた語り部が必要ないことを知る

 

その時には気づくのだろうか

そこにあるのは温かくも

冷たくもない光