車輪の下

詩人か、そうでなければ何にもなりたくない。ヘルマン・ヘッセの言葉。 「よくある話よ」と母親は言った。「エリート被れが挫折して田舎に戻ってくるなんて、そんなものを気取っているつもりなの?」20歳の頃だっただろうか、これもたぶん夏休みに帰省してい…

半年前

いかに退屈であろうとも、この外に花はない。 きっとそうでしょう。では人を愛する能力に欠けてしまった者達は? 疲れました。暮らしがあったって何の意味もないよ、少なくとも主観的には。生きる力がない。本質的にはチューブに繋がれて延命治療を施されて…

風化する教室

本当のことを言えば働くのなんてそんなに難しくないことは知っていて、よくわかんないことで怒られるのだって小学生の時にはもう慣れ切っていたし、自分のできることもできないこともわかっているから、全部通り過ぎて行くだけ。何も考えずに作業していれば…

雪解け

不意に目が覚めた。下を見ると鴨が二羽、水面に顔を突っ込んで餌を探しながら川を流れていった。彼らは確か真冬のマディソン・スクエアでずっと氷漬けになっていたはずなのだが。何かそこに深い意味を見出した訳ではないが、覚えているのはいつもそんなもの…

蟀谷

たぶん最後の更新になる。そう言って最後になったことなんてほとんどないのだが、少なくともしばらくは何も書く気が起こらないだろう。 waisの結果が出たけれど、いたって普通で、これでどうと言えることはないでしょうとのことだった。貰った紙には「検査を…

死ぬのはいつも他人ばかり

今朝ちゃんと薬を飲んだのかどうか記憶が定かではない。11月祭に行こうかなとぼんやり考えていたが、結局のところ昼過ぎからビールを飲んでいたら一日が終わった。飲んでいる最中で最悪の気分になってきたのでツイッターのアカウントを消した。たまに消すと…

風景とリズム

ぼんやりと窓の外を眺めていたけれど、思うところが何もなかった。風景の才能がない。例えば夜道の街灯に何かを見出すようなことは、よほどうまくやらない限りそれ自体の凡庸さを免れ得ない。極端な話をすれば、トンネルを抜けた先が雪国じゃなくても別にい…

10/25

2週間前からストラテラを飲み始めたのだが、あえなく鉄柱に激突し、顎をやられた。頭が変な感じだ。 夕方の話。高島屋の横の喫煙所で煙草を吸っていたら老人に話しかけられた。かなり酔っている様子で、自転車を何処に停めたのか思い出せないらしい。俺にも…

退屈に関する考察

枠を目掛けて石を投げこんでみる。枠の中には何本かの線が置かれていて、その内部を幾つかの部屋に分け、格子模様を作り出している。さらにその中の幾つかの部屋では既に投げた石が場所を取っている。投げた石は枠の中の新しい場所に落ちたり、あらぬ方向に…

symmetry / fractale

コクトー・ツインズを聞きながら、ポール・オースターを読んでいたら朝になっていた。これは嘘で、今は昼間もいいところだ。オースターも本当はほとんど開きっぱなしのままで、幾頁も進んでいない。どうやら疲れているみたいだ、いつもこうなってから疲れに…

夢を読み解くのにはコツがあって 熊が一頭熊に注意 そいつは運命を追ってくるそいつはポンコツの警備員の手によって動物園から放たれて ニヤつきながらこっちに近づいてくる俺はそいつを確かに撃った そして動かなくなったのを確かめたはずだったどういうわ…

view (of such a beautiful world)

雨の空港に私たちは佇んでいた。だんだんと風も強まってきて、恐らく飛行機は欠航だろう。この後に待っているあれこれの手続きのことを考えると私は少し憂鬱を深めた。 「私たち二人とも、ハタチまでに死ねなかったね」 彼女はそう言って、私の隣に座った。…

mirage

いつも最後だと思って生きているけど、最後に何かをしようとも思ってないから、今日も少し記憶を増やすだけ。五年前には日々が点で、それを結んでいくと線ができていくようなイメージを持っていて、それはイメージとしては薄れてしまったけれど、最近ではよ…

バカンスへ

かくして私は物書きをやめたのであったが(「かくして」の内容についてはご想像にお任せするが、凡夫極まりない私のことであるから、やはり凡夫極まりないあなたの想像が如何様なものであれおおよそ正解だと言える。)、物書きと言っても別に今まで何か物を…

pastiche

いつか思い出を美しく飾る気持ちになったら 海に出かける 誰かが貝殻を拾った後の何もない砂浜で もう聞いた話を何度でも話して それまでは静かに 花が木々を飾るのを見ている

春の訪れはやわらかな夜にそっと溶け込んで ついに誰もその全容を掴むことはできなかった 町はもはや語り部を必要とせず ここで待つのも所詮は甲斐ないこと 若者は物語を求めて旅に出た そして自らにもまた語り部が必要ないことを知る その時には気づくのだ…